以下は、著作権法(法庫.com)。をざっと拾い読みしたど素人の「かんそう」です。
第1条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利 を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
著作者は「著作者人格権」と「著作権」を持っている(17条)。
「著作者人格権」(18, 19, 20条) | |||
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18条 | 公表権 | 著作者 | 未公表のものを公衆に提供、提示する権利。 同意を得ないで公表された著作物を含む。二次的著作物も同様。 |
19条 | 氏名表示権 | 著作者 | 公表の際に、著作者名を表示・非表示にする権利。 二次的著作物も同様。 |
20条 | 同一性保持権 | 著作者 | 著作物及びそのタイトルの同一性を保持する権利 |
※当ブログではこれらはひっくるめて「原著作者の名誉」とか「作者への敬意」とか書くことが多いです。
「著作権」(21条から28条) | |||
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21条 | 複製権 | 著作者・専有 | 複製する権利。 |
22条 | 上演権 演奏権 |
著作者・専有 | 公衆に直接見せ、聞かせるために(公に)上演や演奏する権利。 |
22条 | 上映権 | 著作者・専有 | 公に上映する権利。 |
23条 | 公衆送信権等 | 著作者・専有 | 公衆送信(自動公衆送信の場合、送信可能化を含む。)を行う権利 公衆送信される著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利 |
24条 | 口述権 | 著作者・専有 | 公に口述する権利 |
25条 | 展示権 | 著作者・専有 | 美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利 |
26条 | 頒布権 | 著作者・専有 | 映画の著作物をその複製物により頒布する権利 ※ゲームは「映画の著作物」 |
26条 | 譲渡権 | 著作者・専有 | 著作物をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利 (映画の著作物を除く、以下同じ) (映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。) |
26条 | 貸与権 | 著作者・専有 | 著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利 (映画の著作物を除く。) (映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。) |
27条 | 翻訳権 翻案権等 |
著作者・専有 | 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利 |
28条 | 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利 | 二次的著作物の著作者・専有 | 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。 |
※これらは「著作財産権」とも言います。だいたいカネになるから。当ブログでは経済私権という意味で「著作利権」と書くことが多いです。
実はこれらは基本的なものだけで、ここから「出版権(79条)」と「著作隣接権(89条~104条)」が派生しているようです。特に後者はざっと「なんとか権」とつくものだけで↓
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原文サイトでは右サイドに改訂履歴へのリンクがあるのですが、そっちは有料なんで数だけ数えました。
《改正》190個 に 《追加》79個、しめて269。
全て平成9~18の範囲です。10年間で269。全124条だから毎年21.7% の条文変化率。来2008通常国会でまた変わるってハナシだし(違法ダウンロードの30条除外とかは、たしか安倍内閣の方針でもありました)、きっと5年後には別のナニカになってるw。
自分の理解では、これは千客万来の温泉旅館です。やれ建てろそれ増築だってカンジで、いずれ築て直さないと遭難者が出そうです(なおその際は魚の泳ぐ戦国風呂と自前の消防隊を所望します)。たぶんこの記事にも「御社の著作権知識は大丈夫?」って広告がつくと思うのですが、大丈夫な会社あんのかw。
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この状態が続くと、世の中がムダに複雑になるように思います。「泥棒はダメ!ゼッタイ!」みたいな原則抽出が難しいから。
となると、みんなが自分に取って都合のいい部分をつまみ食いして主張し、そのどれもが一見ただしく見える(または実際に正しい)ので真面目に時間を割いてかんがえなきゃならない、という事が起きます。
例えば「映画の著作物」には「頒布権(ヒトサマに配布する権利、有償無償問わず)」がありますが「譲渡権(譲り渡す権利)」がありません。ただし「映画の著作物の複製物」は譲渡可能です。わけわかんないでしょ?具体的にはここから「DVDやゲームの中古売買は違法!違法!禁止!」という理屈が立ちます。んな莫迦な!寝言は寝て言え!と言っても、理屈としては立つのです。「譲渡はしたがお客さん以外に頒布したのではない」です。実際に「中古ゲームソフト訴訟」という裁判でゲーム業界がこの理屈で中古業者を訴えました。あ、ゲームは「映画の著作物」なんですよ一応(但し静止画主体のゲームは別w)。
最終的に「複製物にかかる頒布権は、最初に販売した段階で"消尽"する」という判決が出ましたが、法律に「頒布権」があるって書いてある以上は「それはどっかで"消尽"する」って判決が出るまで、または新しい法律ができるまで、中古業者とゲーム業界が洗脳戦を展開する事になります。消費者向けの広告とか。当時の消費者の反応は「中古ゲームソフト訴訟」でぐぐれば遺跡が見れます。よーするに「んなヒジョーシキな!」で済む事をオカネと時間をかけて最高裁までやったわけで。マータイさんではありませんがモッタイナイ感が漂います(なお頒布権の成り立ちについては次の記事で簡単に書きます)。
「頒布権」の有無も、それがどの段階で「消尽」するのかも、誰が見ても解るというものではありません。「ばかには見えない服」です。
本来こうした経験 ~みんなが自分で考えて意見を言う~のは民主制では非常に重要な経験です。なのですが、元の法律があまり複雑ですと面倒がる人の方が多くなります。その結果、みんなが自分に取って都合のいいものは信じ、都合のわるいものはどんどん信じなくなって行きます。それは「法の支配と民主制の危機」というものだと思 います。
なにより、あまり細かいルールを増やすと「ルールブック解釈屋」「風紀委員」の仕事が増えます。そういうのが必要なのは解るしオカネも動くけど「たのしくはならない」んだよね。
作品ビジネスの成長を願うなら、プリンシパル(根本原則)はシンプルなほうが良いです。
ちなみに当ブログでは全てのチョサクなんとか権を「ねこがみさまに寄進」しています(でも引用、翻訳箇所は原本のライセンスに注意デス)。