先月、漁船とイージス艦の事故の事をちょっと書いた時に、漁船と自衛艦は無線交信できんのかと思ったのですが、今朝の新聞に「現状ではできないので、出来るようにして下さい」という投稿記事が載っていました。しかも20年前から指摘されていた問題だそうで。海の事も電波の事もよく知りませんが、ちょっとメモっておきます。
2008/03/20 朝日新聞朝刊17面(13版)にあった投書記事より抜粋。投書子は、元会社経営者・小型ヨットオーナーの陸 敬三さん。ほぼ全文引用ですが、縮めたり番号 振ったり色塗ったりオレ。
- 背景には、発見の遅れとともに、大きさや目的が異なる船種間での交信がむずかしいと言う、日本に特有の事情があったように思 えてならない。事故を教訓 に、気軽に連絡を連絡を取り合える共通の通信システムを構築すべきではないか
- 大型船舶は、世界共通規格の 国際VHFと いう近距離用無線電話 を積んでいる。国際ルールでは常時、「16チャンネル」という特定の周波数を受信 する事とされ、緊急時はこのチャンネルで呼びかければ相手船や周辺の船と交信できる。
- 漁船の多くや小型レジャー船はこのルールの対象外だが、米国やカナダ、ニュージーランドやオーストリアなど多くの国は、そう した船にも16チャンネルの 常時受信を奨励している。共通の通信基盤こそが海難防止の基本だからだ。
- そのために、米国では国際VHFと同じ規格で、出力だけを弱めた「小出力型国際VHF」無線機 が1万円程度で販売されている。この無線機は無線免許の取 得が不要で手数料も安いので、小さな漁船やレジャー船も手軽に利用できる。
- ところが、日本は船種ごとに縦割りの通信システムを守り続けている。
- 日本の漁船は国際VHFとは別の周波数帯の漁業用無線を使う事が一般的で、大型船と気軽に交信できる状況に無い。
- 小型レジャー船向けには、16チャンネルを使って国際VHFとも通信できる「マリンVHF」と いうシステムがるが、高価なためほとんど普及していな い。
- これは88年の海自潜水艦「なだしお」と大型の釣り船第一富士丸の事故で、共通の通信システムが無い事が問題視されたため 91年末にできた。国 際VHF で使う周波数の一部だけを使えるよう機能を絞ったものだが、販売されている無線機は一種類しかなく、価格は 20万円近くする。電波利用 料や数年ごとの再免 許手数料などもかかるため、小型レジャー船舶オーナーの多くは高額な費用負担や面倒な手続き を避け、アマチュア無線や携帯電話を使っている。
- 当時から、多くの船が国際VHFを気軽に使えるようにすれば海難防止につながる、という指摘があったが、関係省庁に顧みられ ることはなかった。その結果、20年も前に提起された問題は、いまも解決されていない。
- 私は20年以上に渡りアマチュア無線を積んだ小型ヨットで国内外を航海しており、4年前の夏には、濃 霧の北海道、日高沖で30隻以上の漁船団と出くわして恐怖を感じたことがある。このときはレーダーに映った船団が急接近し てくるのに気づきながら、呼 びかけ合う手段はなく、相手が避けてくれるのを祈るしか無かった。米国などのように、漁船やレジャー船に小出力型の国際VHFが普及していれば、私は16 チャンネルで呼びかけ、こちらは速度の遅い帆船であり注意して欲 しいと伝えられただろう。そうすれば、相手もレーダーに映る船の正体を理解出来て安心できただろうし、衝突の予防にも有効だったろうと思う。
- 日本も簡単な手続きと軽い費用負担で、漁船や小型レジャー船などあらゆる船種に小出力型の国際 VHFを解放する政策に転じる べきだ。私には、縦割りのし くみと複雑な制度が、海上交通の危険を高めているように思えてならない。
【参考】 ・黒潮丸の中古艇相談&マリンサーベイ - Yahoo!ブログ (080320)
・イージス艦事故-共通の通信システム作れ 080320-朝日OPINION
えーともしかしてこれは、な んかのタテマエで独自規格を作って、国内メーカーに専用機を作らせ て、付随手続きを行 う天下り団体にオ カネが落ちるようにする。というヤツでしょうか。
この構図は却って、" 適法性が疑わしい行為" を増やしてしまう、 とゆう、あらかじめ描いた絵に都合の良 い事実だけを探す真似をしてみたところ、サクッと出ました。
国 際VHF免許を持つレジャーボートオーナーさんのサイト、国際 VHF JH1KRXのホームページに よると、実態は『マ リンVHFの5 ワットで開局して25 ワット機に積み替える人が多いのですね。これって違法 なんだけど』 だそうで(ちなみにこのサイト、免許取得費用とか、検査手続きとか、ご自分が経験された開局までの経過をまとめておられます。真面目な遊びぶりが楽しげで す)。
その違法行為が上 記10番のようなケースを 避けるためなのか、単に楽しいからなのかは解りませんが、ノーチェックでこれを事実と捉えた場合、まず「マリンVHFを開局する人がある」と言うのは、そ こに携帯やアマ無線ではカヴァー できない需要がある事を意味します。しかし、「積み替える人が多い」というのは、マリンVHFは「真の需要、または、本来の目 的」とはズレている事 を意味します。25ワットではなんかま た別の問題があるのかもしれないにせよ、5ワットではナニカが不足という事です。
大型船同士の場合、国際VHFは こんな感じで使うようです。
国際VHF無線は用途別に55チャンネルに分けられ、航行中はメインチャンネルと呼ばれる16チャン ネル(156.80MHz)を 受信状態にしてあり ます。ここは海岸局からの気象情報や航行警報、入り出船情報、船舶同士の通話が聞こえてきます。メ インチャンネルの16チャンネルはいわば皆の集合場所で す。ここで特定の相手を呼び出し、必要な通話は別のチャンネルで行わなければなりません。
例1海岸局 (こちらは東京マ-チス、NN航路XXを航行する貨物船そのまま進むと座礁の危険があります、進路を変更してください、以 上東京マーチス)
例2
海岸局 (こちらは東京マーチス、気象庁よりXX時に波浪警報が出されました。付近を航行する船舶は注意してください。以上東京 マーチス)
マーチスとは船舶の動静把握、情報提供を行う管制塔の役割をする海上交通センターです。
例3
船1 (本船の前を航行するタンカーAA丸、こちらは貴船の後ろを行くXX丸応答ありますか?)
船2 (はい、AA丸です)
船1 (6チャンネルへお願いします)メインチャンネルの16チャンネルはいわば皆の集合場所です。ここで特定の相手を呼び出し、必要な通話は別のチャンネルで行わなけ ればなりません。船1の指定した6チャンネル(156.30MHz)へいってみましょう。
船 1 (AA丸、こちらはXX丸、本船この先HH度で南下の予定なのですが、貴船はどちらに向かわれますか)
船2 (はい、本船はこの先KK方向に向かいますので、本船の右舷側からお先にどうぞ)
船1 (ありがとうございます、16チャンネル戻します)自動車の様に車線もなく、出会い頭に手で合図するわけにもいかない船ではこのように無線で互いの動きを知りゆずりあいの光景もあっ たりします。
また、海上保安庁などから海難情報がもたらされることもあり、緊迫した場面に遭遇する事があったり、外国からの大型貨物船からなま りのある英語通話に、ビ ルの様に大きな船のブリッジにいる面々を想像するのも楽しいものです。
あ ぱっちのちょいと変わった小笠原ガイド 2006年1月16日 更新/おがさわら丸のひみつ
あ たごと清徳丸の間に太字部分の会話がありゃあ、衝突事故は避けられたのではないか?漁 船同士は無線で危ないと言い合っていた(asahi.com)のに、なぜそこに「あたご」とのやり取りは無かったのか?ここにいっぱい記事があるけど(asahi.com)、 一番の問題はそこなんでないかと思うのです。
そらまー書く人は政局に持ってった 方が記事増やせておもしろいだろうけどさー。あたごの方で漁労無線積みやがれって言い方もできるだろうけどさー。それで避けられるのは漁船 V.S. 自衛艦のパターンだけなのよ。漁船・商船・ヨット・その他の順列組み合わせパターンが落ちるのよ。
漁労の人たちは地元の議員さんにマリンVHFの規制緩和を求めると良いのではないかと思った。
自分は電波の事も海の事もよく知らないのですが、表にしてみました。VHFって事はテレビ(地上波アナログ)と被ってるかもと思った んで、ちょっと煩瑣です。なお、電波帯域の割当ては~~なんMHzはこの目的で使いなさいね~~は、総務省の仕事です。
通称 | 周波 数 | 割当用途 | ||
---|---|---|---|---|
V H F |
30MHz | |||
76M ~90MHz |
FMラジオ | |||
VHF-low | 90M ~108MHz |
テレビ(地アナ NHK 第1~第3) | ||
ミッドバンド | 108M ~???Hz |
ケーブルテレビの多チャン ネル放送など | ||
156.025M ~162.025MHz |
国
際VHF ・無線機は中古で3万~ ・免許10万程度 小出力型国際VHF ・無線機1万円程度 ・免許不要 ・用途別に55ch ・ 平時から海岸局や保安庁などと連絡が取れる。 |
マ
リンVHF ・無線機20万円程度? ・要免許(5年更新) ・要マリンVHF海岸局への加入(年会費0.5万) ・定期検査は3年サイクル ・受信は国際VHF全域。 ・送信はメインチャンネルと呼ばれる16ch・17chのみ?。 ・その他デバイスに様々な制限[出典4] |
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|
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VHF-high | 170M ~222MHz |
テレビ(地アナ民放 第 4~第12) | ||
スーパーバンド | 220M~ |
ケーブルテレビの多チャン ネル放送など | ||
U H F |
300Mhz~ | テレビ(地アナ 地方局) ケーブルテレビの多チャンネル放送 テレビ(地デジ) |
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~470MHz | ||||
【出典】
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まず、世 界共通規格の国際VHFは、特にテレビと周波数が被るわけではないようです。受信は国際VHF全域なのは当然でしょうが、 送信chを制限しなくても、他の無線用途と被る心配はなさそうです。5分タイマーとともに、アマチュア無線みたく、ダベりに使われちゃたまらん。おまーら 緊急用途以外に使うなよという事でしょうか?
次に機能。一回5分で、互いの進路が被らないやりとりってできるのかな?そこに余裕を持たせる為の5 ワットで開局して25 ワット機に積み替え(たぶんもっと遠距離から余裕もって通信できる)だったりしませんかこれは。
最後に、価格。もしもマリンVHF の無線機が20万ち かくするのなら、いっそ国 際VHF開局にチャレンジ!さんのように国際VHF取っ たほうが安上がりっぽい(いやこのサイト、取得過程でなんどもお役人さんと行き違いが出てて面白いですホントに)。
どうも88年の海自潜水艦「なだしお」と大型の釣り 船第一富士丸の事故は、新 たな規制ジャンル(電波利権)を 生んだような気がします。
前項の表でも出典(4)にさせていただいた、伝 馬船と釣り人生 - マリンVHFさんによると、「マリンVHF船舶局は何れかの海岸局に加入する必要があります。関東小型船安全協 会では、下記の(社)関東小型船安全協会海岸局一覧表のとおり、各地で海岸局を運営しており、協会の会員になると、これら全ての海岸局と交信が可能とな り、無線局免許申請に必要な「加入証明書」を発行致します。」
と言う事なので、「 社団法人 関東小型船安全協 会」さんの「役員名簿」 を探してみました。
役員名簿(平成18年5月30日現 在(50音別) 役職名 氏 名 常勤・非常勤 公務員出身者の最終官職名 (理 事)
会 長梅 山 克司 非常勤 横浜海上保安部長 (理 事)
副 会 長三鬼 博明 非常勤 (理 事)
副 会 長西垣 利彦 非常勤 専務理事 山田 力 常 勤 理 事 伊藤 秀利 非常勤 理 事 岩男 登 非常勤 第六管区海上保安本部長 理 事 大島 博 非常勤 理 事 川口 忠 非常勤 千葉海上保安部長 理 事 貝道 和昭 非常勤 理 事 早苗 由隆 非常勤 理 事 菅原 洋 非常勤 理 事 鈴木 直元 非常勤 理 事 竹村 宰一 非常勤 理 事 竹山 博 非常勤 理 事 土屋 智 非常勤 理 事 樋口 誠六 非常勤 理 事 松井 正昭 非常勤 理 事 森田 貴之 非常勤 理 事 山田 佳郎 非常勤 理 事 遊佐 誠一朗 非常勤
JEITAやARIBなどでは、普通「公務員出身者の最終官職名」というのは隠すんですが(いろいろ五月蝿いヤツが多いから)、ここでは公開され ていました。
一般論として、わざわざ列を設けてそれだけ記載すると言う事は、そうするだけの価値がある情報という事です。おそらく全 国の海上保安庁関係の社団法人 (Wikipedia)もこうした構成になっているでしょう。
マリンVHFの許認可、検査、そ れにまつわる出費は、ここに入るものと思われます。
以下はあくまでもフィクションです。
著作権をタテマエに独自規格を作って、国内メーカーに専用機を作らせて、B-CASの審査を行うARIBにオカネが落ちるようにする。それが却って、"違法な視聴"やフリーオの売り上げを増やす。
別に地デジに命の危険は無いでしょうが、この構図は、わりと普遍的なのかもしれません。