ふたたび このようなことが ないようにな。
本記事はWHO による自殺予防の手引き [PDF形式:92KB] より、マスメディアのための手引き(18p以降)を抜粋したものです。
構成は若干変えています。上位ページは 内閣府 / 共生社会政策統括官 / 自殺対策ホームページ です。
「マス」ではないけどブログもメディアの一種ではあると思うので。
ぜひすべきこと
してはならないこと
現代社会において、メディアは、広範囲にわたる情報をさまざまな方法で提供し、重要な役割を果たしている。地域の態度、信条、行動などに大きな影響力を持ち、政治、経済、社会に対して重要な役割を果たしている。このような影響力があるからこそ、メディアは自殺予防にも積極的な役割を果たすことができる。
おそらく自殺は自己の命を終わらすもっとも悲劇的な方法である。自殺を考えている人の大多数は、生と死の間を揺れ動いているのであって、けっして死の意思が固まっているわけではない。そもそも自殺に傾きやすい人を死の渕に追いやるさまざまな要因のひとつとして、メディアによる自殺報道の影響もあるだろう。メディアが自殺をいかに報じるかということは他の自殺にも大いに影響を及ぼす可能性がある。
本冊子はメディアが自殺を報道することによってどれほどの影響力を持つかを概説する。そして、一般的状況あるいは特定の状況で自殺をどのように報道すべきか提言し、さらに、自殺を報道する際に避けるべき問題点についても指摘する。
1774年に出版されたゲーテの「若きウェルテルの悩み」は、メディアと自殺に関連があるということを示す最も古い一例である。その小説では、失恋した後に、主人公は銃で自殺した。この本が出版されて間もなく、多くの若い男性が同じ手段で自殺したと伝えられた。その結果、この本はいくつかの場所で発禁となった。というわけで、自殺の模倣を示すのに「ウェルテル効果」という言葉を使っている学術論文もある。
自殺とメディアの役割についての他の研究は20世紀に米国で実施された。広く知られている最近の事例として、Derek Humphryの書いた”Final Exit”(最後の出口)があり、ニューヨークではこの本に説明されていた手段を用いた自殺が増加した。フランスで出版された「自殺」という題の本が翻訳された後に、やはり自殺の増加が見られた。Philips らによると、ある自殺がどれほど大々的に報道されたかという程度は、その後に引き起こされる自殺の数に直接関連している。著名人の自殺の事例は、とくに強い衝撃をもたらす。
テレビもまた自殺行動に影響を及ぼす。テレビが自殺のニュースを伝えた後は10日後まで自殺が増えることをPhilipsは示した。活字メディアと同様に、多くの局や番組で取り上げられ、広く知られた事例ほど影響力があり、とくに自殺したのが著名人の場合その傾向がよりいっそう強かった。しかし、フィクションの番組については、その影響力について意見の一致を見ていない。すなわち、まったく影響がないというものから、自殺行動が増加したというものまである。
演劇や音楽と自殺行動の関係についてはあまり調査されていない。主に個々の事例の報告に過ぎない。
最近では、インターネットが一連の新しい話題を提供している。希死念慮のある人が自殺するように仕向けるウェブサイトもあれば、自殺を予防しようとするウェブサイトもある。インターネットが自殺にもたらす影響について今のところ系統的な研究はない。
一般的に、現実に起きた自殺について新聞やテレビが報道すると、自殺が統計学的に有意に増える場合があることを示唆する十分な証拠があり、とくに若者に影響が強いように思われる。大多数の自殺はメディアでは報道されないのだが、特定の人物、方法、場所によっては、自殺を報道するという決断が下される。自殺はしばしばニュースバリューがあり、メディアにはそれを報道する権利がある。しかし、メディアの注目を最も集める自殺というのは、一般のパターンからはるかに外れた自殺でもあるのだ。実際のところ、メディアで報道される事例というのは、ほとんどの場合、非定型的で、例外的なものであり、それを典型的な例であると報道するために、自殺についての誤解がますます広まってしまう。潜在的に危険性の高い人の自殺行動を増やしてしまうのは、自殺報道そのものではなく、ある種の特定の報道の仕方であることについて臨床家や研究者は同意している。その反対に、自殺行動を模倣するのを防止するのに役立つ報道の仕方もある。それにも関わらず、自殺について報道することは、自殺は「正常な行為である」という認識を広めてしまっている可能性がある。自殺について繰り返し持続的に報道すると、特定の人は自殺についてますますとらわれてしまう。その影響はとくに思春期や若年成人で強い。
啓発されたメディアによって、適切で、正確で、援助するような方法で自殺が報道されるならば、自殺によって生命が失われるという悲劇的な死を予防することに役立つだろう。
自殺を報道する際にはとくに以下の点に注意を払う必要がある。
以下の点を念頭に置くべきである。
自殺報道に際して以下のような情報を伝えることによって、メディアは自殺予防の重要な役割を果たすことができる。
自分は、2006年秋に、子供たちの連続自殺が世間を騒がせ、教師がネットがゲーム感覚がという報道が相次いだのを覚えています。ささやかながら当時のブログにカウンターを書いたのですが、筑紫哲也さん(当時現役)による上記文書の紹介をきっかけに、差し替えました [跡地]。