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WHOによる自殺予防の手引き

最終更新:2008/04/26


ふたたび このようなことが ないようにな。

 本記事はWHO による自殺予防の手引き [PDF形式:92KB] より、マスメディアのための手引き(18p以降)を抜粋したものです。
 構成は若干変えています。上位ページは 内閣府 / 共生社会政策統括官 / 自殺対策ホームページ です。

 「マス」ではないけどブログもメディアの一種ではあると思うので。

まとめ

ぜひすべきこと

  • 事実を報道する際に、精神保健の専門家と緊密に連絡を取る。
  • 自殺に関して「既遂」(completed) という言葉を用いる。「成功」 (successful)という言葉は用いない。
  • 自殺に関連した事実のみを扱う。一面には掲載しない。
  • 自殺以外の他の解決法に焦点を当てる。
  • 電話相談や他の地域の援助機関に関する情報を提供する。
  • 自殺の危険因子や警戒兆候に関する情報を伝える。

してはならないこと

  • 遺体や遺書の写真を掲載する。
  • 自殺方法を詳しく報道する。
  • 単純化した原因を報道する。
  • 自殺を美化したりセンセーショナルに報道する。
  • 宗教的・文化的な固定観念を当てはめる。
  • 自殺を非難する。

【マスメディアのための手引き】

 現代社会において、メディアは、広範囲にわたる情報をさまざまな方法で提供し、重要な役割を果たしている。地域の態度、信条、行動などに大きな影響力を持ち、政治、経済、社会に対して重要な役割を果たしている。このような影響力があるからこそ、メディアは自殺予防にも積極的な役割を果たすことができる。

 おそらく自殺は自己の命を終わらすもっとも悲劇的な方法である。自殺を考えている人の大多数は、生と死の間を揺れ動いているのであって、けっして死の意思が固まっているわけではない。そもそも自殺に傾きやすい人を死の渕に追いやるさまざまな要因のひとつとして、メディアによる自殺報道の影響もあるだろう。メディアが自殺をいかに報じるかということは他の自殺にも大いに影響を及ぼす可能性がある。

 本冊子はメディアが自殺を報道することによってどれほどの影響力を持つかを概説する。そして、一般的状況あるいは特定の状況で自殺をどのように報道すべきか提言し、さらに、自殺を報道する際に避けるべき問題点についても指摘する。

自殺に関するメディア報道の影響力

 1774年に出版されたゲーテの「若きウェルテルの悩み」は、メディアと自殺に関連があるということを示す最も古い一例である。その小説では、失恋した後に、主人公は銃で自殺した。この本が出版されて間もなく、多くの若い男性が同じ手段で自殺したと伝えられた。その結果、この本はいくつかの場所で発禁となった。というわけで、自殺の模倣を示すのに「ウェルテル効果」という言葉を使っている学術論文もある。

 自殺とメディアの役割についての他の研究は20世紀に米国で実施された。広く知られている最近の事例として、Derek Humphryの書いた”Final Exit”(最後の出口)があり、ニューヨークではこの本に説明されていた手段を用いた自殺が増加した。フランスで出版された「自殺」という題の本が翻訳された後に、やはり自殺の増加が見られた。Philips らによると、ある自殺がどれほど大々的に報道されたかという程度は、その後に引き起こされる自殺の数に直接関連している。著名人の自殺の事例は、とくに強い衝撃をもたらす。

 テレビもまた自殺行動に影響を及ぼす。テレビが自殺のニュースを伝えた後は10日後まで自殺が増えることをPhilipsは示した。活字メディアと同様に、多くの局や番組で取り上げられ、広く知られた事例ほど影響力があり、とくに自殺したのが著名人の場合その傾向がよりいっそう強かった。しかし、フィクションの番組については、その影響力について意見の一致を見ていない。すなわち、まったく影響がないというものから、自殺行動が増加したというものまである。

 演劇や音楽と自殺行動の関係についてはあまり調査されていない。主に個々の事例の報告に過ぎない。

 最近では、インターネットが一連の新しい話題を提供している。希死念慮のある人が自殺するように仕向けるウェブサイトもあれば、自殺を予防しようとするウェブサイトもある。インターネットが自殺にもたらす影響について今のところ系統的な研究はない。

 一般的に、現実に起きた自殺について新聞やテレビが報道すると、自殺が統計学的に有意に増える場合があることを示唆する十分な証拠があり、とくに若者に影響が強いように思われる。大多数の自殺はメディアでは報道されないのだが、特定の人物、方法、場所によっては、自殺を報道するという決断が下される。自殺はしばしばニュースバリューがあり、メディアにはそれを報道する権利がある。しかし、メディアの注目を最も集める自殺というのは、一般のパターンからはるかに外れた自殺でもあるのだ。実際のところ、メディアで報道される事例というのは、ほとんどの場合、非定型的で、例外的なものであり、それを典型的な例であると報道するために、自殺についての誤解がますます広まってしまう。潜在的に危険性の高い人の自殺行動を増やしてしまうのは、自殺報道そのものではなく、ある種の特定の報道の仕方であることについて臨床家や研究者は同意している。その反対に、自殺行動を模倣するのを防止するのに役立つ報道の仕方もある。それにも関わらず、自殺について報道することは、自殺は「正常な行為である」という認識を広めてしまっている可能性がある。自殺について繰り返し持続的に報道すると、特定の人は自殺についてますますとらわれてしまう。その影響はとくに思春期や若年成人で強い。

啓発されたメディアによって、適切で、正確で、援助するような方法で自殺が報道されるならば、自殺によって生命が失われるという悲劇的な死を予防することに役立つだろう。

自殺を報道する際の一般的原則

 自殺を報道する際にはとくに以下の点に注意を払う必要がある。

  •  慎重かつ正確に統計を解釈する。
  •  信頼できる情報源を利用する。
  •  時間が迫っているからといって、十分に用意されていないコメントを安易に用いない。
  •  件数の少ない事例を過度に一般化することに対して特に慎重にする。たとえば、「自殺の疫病」「世界でもっとも高い自殺率を呈する地域」などといった表現は使うべきではない。
  •  社会・文化的な変化に対する理解できる反応として自殺行動を報道するのを控える。

特別な自殺をどのように報道すべきか

 以下の点を念頭に置くべきである。

  • 特に有名人が自殺した場合には、自殺を過度にセンセーショナルに報道すべきではない。最小限度の報道にとどめる。その人が罹患していた可能性のある精神的な問題についても取り上げる。詳しすぎる報道はできる限り控えるように努力する。自殺者、方法、現場の写真は提示すべきではない。自殺の見出しを一面に載せることは自殺報道では望ましいことではない。
  • 自殺手段やその入手方法を詳しく報道するのは避ける。メディアによって報道された自殺方法が、それに引き続く自殺でもしばしば模倣されることを明らかにしている研究がある。特定の場所(ある特定の橋、崖、ビル、鉄道)がしばしば自殺の場所として広く知られていて、それが報道されることによって、さらに多くの人々がその場所で自殺する危険がある。
  • 自殺を説明ができないこととして報道したり、あるいはあまりにも単純化して報道すべきではない。自殺はけっして単一の原因や出来事だけで生じるわけではない。しばしば多くの要因が複雑に関連して自殺が生じている。たとえば、精神障害、身体疾患、薬物乱用、家庭的な問題、対人的な葛藤、人生の問題などが複雑に関係している。さまざまな原因が自殺に関連していたことを認識するほうが有用である。
  • 破産、試験の不合格、性的虐待といった個人的な問題を解決する方法として自殺を報道すべきではない。
  • 偏見や心理的な悩みといった問題について配慮し、遺族や他の遺された人々に及ぼす影響を考慮して報道すべきである。
  • 自殺者を殉教者のように美化したりすると、潜在的に自殺の危険の高い人に対して、社会が自殺を名誉あるものとみなしているとのメッセージを送ってしまいかねない。むしろ、自殺した人を悼むことを強調すべきである。
  • 自殺未遂のために身体的に障害が残った点(脳障害、麻痺など)を報道することは、自殺の抑止となる可能性がある。

入手可能な援助源について情報を与える

 自殺報道に際して以下のような情報を伝えることによって、メディアは自殺予防の重要な役割を果たすことができる。

  • 最新の電話番号や住所を載せて、利用可能な精神保健機関や電話相談機関の一覧を掲載する。
  • 自殺行動の警戒兆候について報道する。
  • うつ病がしばしば自殺行動に関連しているのだが、うつ病は治療ができる状態であることを報道する。
  • 遺族に対して心からの追悼の念を伝えるとともに、遺族を支えるグループの電話番号なども報道する。このようにすることで、精神保健の専門家、友人、家族からの介入の可能性が高まる。

***

 自分は、2006年秋に、子供たちの連続自殺が世間を騒がせ、教師がネットがゲーム感覚がという報道が相次いだのを覚えています。ささやかながら当時のブログにカウンターを書いたのですが、筑紫哲也さん(当時現役)による上記文書の紹介をきっかけに、差し替えました [跡地]。

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