2009/01/09、デジタル・コンテンツ利用促進協議会ホームページがオープンし、同時に「デジタル・コンテンツ利用促進協議会『会長・副会長試案』(PDF)」が発表されました。本記事はこの政策提言案の全文をHTML化したものです。同協議会では、本政策提言案に付き、意見を募集しています。締め切りは2009/02/10。
自分がこの協議会に興味を持ったのは、新種くさいからです。自分の知る限り、デジタルコンテンツの流通促進に関わる会議は、現在日本に6つあります。
1番~4番までは、天下り団体を通じて一体化した「業界と官庁」のコントロールが効くものです。しかし、こうした仕掛けでは状況をコントロールできない事例が増えています。ひらたく言やぁ「08Q2ダビ10紛争」。
5番6番はそうではありません。英米型議員立法の母体となる可能性があります。
実は6個目にあたる「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」は背景がよくわからないのですが、080909の設立総会では、自民党から協議会顧問として小坂憲次氏、松田岩夫氏、甘利明氏(元経産大臣)ら、民主党からも近藤洋介衆議院議員が出席したそうで、おそらくは5番が背景にあると思われます。いずれにしても、ちょっと毛色が違います。
これは、既存の「業界+官庁構造」よりも視野の広い立法や施策を産む可能性があります。と同時に、在来型より生々しい米国型ロビー活動も付いてくる事でしょう。てゆうかコレ自体がそうではないかという気も、します。
今日は,「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」の設立総会&記念パーティに出席してきました。設立総会から会費5000円で帝国ホテルだよ, ということで,MIAUとの資金力の差は歴然としていました。
「利用促進協議会」といいつつ,壇上に上がって挨拶を述べるお偉いさんは,中山先生を除けば,川上のコンテンツホルダ側のお方ばかりで,川下のエンドユーザーや川中の流通業者の代表が誰も壇上に登っていないという時点で,「コンテンツ利用促進」という協議会の本旨はどこかに行ってしまうのではないかという危機感をたっぷり抱いてしまいました。
080909:benli: デジタル・コンテンツ利用促進協議会
残念ながら「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」のサイトには、まだ会員名簿も組織図も無いのですが、、、人は利得で動きます。商売人は利益。議員さんは票。それは善くも悪くもありません。しっかり読めば、背景のアタリくらいはつく可能性があります。
以下、原文は無加工ですが、HTML化にあたり先方の許可は得ていません。著作権上の問題から、記事が消滅する可能性があります。
この度、当協議会は、デジタル・コンテンツの利用促進を目的とした政策提言案(以下「本試案」と言います。)を会長・副会長によってとりまとめましたので、ここに公表いたします。
当協議会設立総会において会長から申し上げた通り、近年のデジタル化・ネット化の進行は極めて急であり、これによる社会の変化は、後世、産業革命に匹敵する大革命と評価されることでしょう。コンピュータやインターネットが急速に発展した現代では、このように高度に進んだデジタル化・ネットワーク化に対応したデジタル・コンテンツの利用促進策が求められており、各国が関連政策の整備にしのぎを削っています。しかるに、我が国のコンテンツ産業の伸び率は世界平均と比較しても非常に低いことからすると1、我が国におけるコンテンツの利用・流通促進策の導入は喫緊の課題といわざるを得ません。
コンテンツは、国内外でより多くのユーザーに利用されることにより、クリエーターなど関係者がより多くの収益機会に恵まれ、より豊かな創造のサイクルが回る、というメカニズムに立脚すべきであり、利用促進が権利者の利益にも資することは言を待ちません。ある財が流動化、すなわち流通し利用されるためには、権利の集中化が望ましく、これはデジタル・コンテンツについても等しく当てはまります。しかるに、現在の著作権法制は、一つのコンテンツの上に、多数の権利が複雑に絡み合い、権利処理だけで多くの時間と費用が必要であるのが現状であり2、現実問題として、著作権法が規制法的に機能していることは否定できません。
現状を改善する方法として、権利者と利用者との契約に委ねる方法もありますが、アメリカのように、俳優団体が団結して映画会社と団体交渉をし、しかるべき契約に持ち込むといった基盤を有しない我が国においては、契約のみによる権利集中化作業は100年河清を待つ感があります。また、近時、放送番組の二次利用に係る実演家が不明の場合の暫定的な措置を権利者団体と放送事業者等が合意し、これに基づいて不明者が判明しない場合でも二次利用(過去の放送コンテンツのオンデマンドサービス)を進めるという自主的な取組が実施されております。かかる民間での努力はもちろん大いに賞賛すべきであり敬意を表するものではありますが、残念ながらそのような場合の二次利用が適法となる法的裏付けがありません。
▲1 | たとえば、2006年度は世界平均が6.9%の伸び率であるのに対して、我が国は1.1%に過ぎません(
知的財産戦略本部知的財産による競争力強化専門調査会(第6回・平成20年10月10日
)配布資料「政策レビュー及び第3期基本方針の在り方に関する検討の進め方と基本的考え方について(案)」4頁)。![]() |
▲2 | 特に、デジタル・コンテンツの製作過程には多くの権利者が関与することから、権利処理が複雑化するという特性があると考えられます。 |
そこで、当協議会としては、デジタル化・ネットワーク化に対応した世界最先端のコンテンツ大国を実現するという観点から、本試案をデジタル・コンテンツのインターネット上における利用に適用される特別法として早急に具体化し法整備することにより、上記のような二次利用が適法となることも含め、デジタル・コンテンツの利用・流通を促進すべきであると考えます。
.具体的には、上記のように、デジタル・コンテンツが流通し利用されるためには、製作されたデジタル・コンテンツに係る権利の集中化が望ましいことから、本試案は、①対象となるデジタル・コンテンツの利用に関する権利の集中化をその柱とします。
また、その際、誰がその権利を集中された者であるか等、対象コンテンツの権利に関する情報が、対外的に透明に、すなわち利用しようとする者にとって公に明らかにならないと利用が十分に促進されないことから、②権利情報の明確化が必要であると考えます。
そして、当該デジタル・コンテンツを利用しようとする者が、③適正な利用を加重な困難なく行い、原権利者に適正な還元がなされる仕組みも重要であると考えます。
さらに、激しいスピードで変化するデジタル化・ネットワーク化に対応するためには、既存の権利制限規定を限定列挙する方式では法整備が機動的になされるとは限らないことから、④デジタル・コンテンツの特性に対応したフェア・ユース規定の導入も併せて行うべきと考えます3。
▲3 | なお、フェア・ユースに名を借りた違法なコンテンツ流通に拍車がかかるおそれに対応するために、違法な海賊版デジタル・コンテンツの制作や技術的保護手段(コピー・プロテクション)の回避行為等の不正使用の取り締まりの徹底等、また、技術的保護手段等のコンピュータソフトウェア等の技術による対応も重要な役割を果たすものと考えられます。 |
本試案は、対象となるデジタル・コンテンツ(以下「対象コンテンツ」と言います。)の利用に関する権利の集中化をその柱としますが、そのためには、(1)対象コンテンツをどの範囲にするか、(2)権利を集中化するための要件をどのように設定するか、(3)権利を集中化するとして誰に集中するか(以下その者を「法定事業者」と言います。)、(4)法定事業者はどのような権利を有することになるか4が主に問題となるものと思われます。
▲4 | 法定事業者の負う義務については後述4.(1)をご参照下さい。 |
本試案は、デジタル・コンテンツのインターネット上での利用・流通の促進を目的としますが、かかる利用・流通の促進が求められているものとしては、原権利者(原作の著作者や、製作に関与する著作者・著作隣接権者等)の許諾を得て録画、録音、放送された5映画、音楽、放送のコンテンツがまずは考えられるものと思われます6。
音楽についても権利処理の煩雑さが大きな問題として指摘されておりますが7、解決の必要性がより強く叫ばれているのは過去のテレビ番組等であると思われることから8、たとえば音楽については(現状での処理を踏まえて)対象コンテンツの範囲外とすることも考えられます。
▲5 | なお、たとえば、当該映画、音楽、放送のコンテンツが公開され一定期間経過したものについては、原権利者から録画、録音、放送の許諾があったことを推定する旨規定することが考えられます。 |
▲6 | これに対して、対象コンテンツを活字やゲームなどにも拡張する必要性は、現時点においては、必ずしもないのではないかと考えられます。 |
▲7 | たとえば、大野雄一「スピードと柔軟性、透明性問われる音楽著作権管理団体」エコノミスト2008年7月29日号。 |
▲8 | たとえば、経済財政諮問会議(平成19年第4回・平成19年2月27日)有識者議員提出資料「ITによる生産性の加速を実現するために」。 |
対象コンテンツについて権利を集中するための要件としては、たとえば、原権利者を尊重するという観点から、対象コンテンツの原権利者9からの本試案に基づく特別法による権利集中を受けない旨の意思表示の有無をメルクマールとすることが考えられます。その際、インターネット上における利用に関して、原権利者から別段の10意思表示がなされていないことを要件とすることが考えられます。この点に関しては、原権利者のいずれか一人でもから別段の意思表示がなされた場合には特別法の適用を受けないと規定することも考えられますが、これに対して、デジタル・コンテンツの価値創造への寄与度合において少数の原権利者の反対若しくは不参同又は所在不明によって対象コンテンツの利用が阻害されるのを回避し、対象コンテンツの利用・流通の促進を促すという観点からは、一定の原権利者からの別段の意思表示をメルクマールとする方が望ましいのではないかと考えられます。その一定の原権利者としては、たとえば、①全て、②それよりも少数((i)4分の3 以上11又は(iii)過半数)、③いずれかの主要な原権利者とすること等が考えられます13。
.対象コンテンツとしては、本試案に基づく特別法が施行される前に録画等されたもの(以下「既存コンテンツ」と言います。)と、施行後に録画等されたもの(以下「新規コンテンツ」と言います。)に分けられますが、両者について同じ要件とする制度設計も、別の要件とする制度設計もあると思われます。
なお、既存コンテンツについては、①特別法施行時、又は、②特別法施行後(たとえば公布後1年などの)一定の期間が経過した時点における原権利者の意思表示をメルクマールとすることが、特別法制定時から施行時又は当該期間経過までの間に既存コンテンツについて契約による処理が促進され、望ましいのではないかと考えられます。
▲9 | 但し、現在の著作権法上の枠組みから大きく外れることを避けるべく、著作権法上、ワンチャンス主義の適用がある実演家(著作権法92条の2等)については、本法においても引き続きワンチャンス主義を適用すべきであると考えます。従って、本文以下では、ワンチャンス主義が適用され、録画、録音の許諾をした実演家を除きます。 |
▲10 | すなわち、特別法の適用を排除する旨や、利用について原権利者からの許諾を必要とする旨等の意思表示です。 |
▲11 | 建物の区分所有等に関する法律17条(マンション等の共有部分の変更)等の要件と同様です。 |
▲12 | 株主総会の特別決議(会社法309条2項)等の要件と同様です。 |
▲13 | 後者になるにつれ、権利を集中化するための要件としては厳しくなることから、すべからくデジタル・コンテンツの利用を促進という観点からすれば、③よりも②、②よりも①の方がかかる利用促進に資するものと考えられます。また、③については、現行法制下においても、(テレビドラマのエキストラ出演者などの)主要ではない原権利者が権利主張を行った場合には、裁判の場面では権利濫用などの理論によりその権利主張が制限されると解釈されることもあり得るように考えられ、かかる解釈がとられるならば、現行法制とあまり変わらないのではないようにも考えられますが、なお法律上明確化しておく効果・意義はあると思われます。 |
権利関係をできるだけ簡明にするという観点からすれば、一つの対象コンテンツにつきできる限り一人の法定事業者を特定すべきものと考えられます。
そして、本試案は、対象コンテンツの権利に関する情報を公に明らかにし、利用しようとする者が適正な利用を行い、原権利者に適切な還元を行うことを内容とするものであることからすると、法定事業者は、このような権利情報の収集等を行う当事者としての能力を有すると認められる者14と規定するべきであり、たとえば、その要件は内閣府令で定めるものとすることが考えられます。
▲14 | たとえば、特に対象コンテンツの権利情報を有しているか否かという観点からすれば、①映画については当該映画の映画製作者、②放送については当該放送を放送した放送事業者、③音楽については当該音楽を固定したレコード製作者が考えられ、あるいは、(典型的にはこれらの者と重なることも多いでしょうが)当該対象コンテンツの製作について経済的なリスクを負った者が考えられますが、デジタル技術の発展に伴い出現する新たなビジネスモデル等を否定するものではなく、これをエンカレッジするという観点から、本文記載の能力(特に、責任を果たす能力)を有していると認められるのであればこれらに限定する必要はないのではないかと考えられます。 |
本試案は、法定事業者に権利を集中させて対象コンテンツのインターネット上における利用・流通を促進することを目的とするものであることから、法定事業者は、対象コンテンツをインターネット上での流通を目的としてこれを自ら利用15し、又は第三者をして利用せしめる法定の非排他的な許諾権を持つとすることが考えられます(法定事業者の負う義務については後述4.(1) をご参照下さい。)。
その結果、法定事業者による利用及び利用許諾に対する原権利者の権利行使はその限度では制限されることになりますが、原権利者自身による利用及び利用許諾は妨げられないことを想定しております。
▲15 | 対象コンテンツのインターネット上での流通を目的として、対象コンテンツについて公衆送信、複製(アナログのコンテンツをデジタル化することを含む)、公衆への伝達及び翻案等の改変を行うことをいいます。 |
対象コンテンツの権利に関する情報を、これを利用しようとする外部の第三者からも判明することが容易とするという権利情報の明確化に関しては、(1)明確化の方法と、(2)その効果が主に問題となるものと思われます。
対象コンテンツの権利情報を公に明確化するためには、たとえば、法定事業者が対象コンテンツの権利に係る情報を一定の機関(ここでは仮に、以下、 「コンテンツID管理事業者16」と言います。)に登録17し、コンテンツID管理事業者は登録された情報18を電磁的方法により公示することが考えられます。
かかる登録に際しては、①対象コンテンツの正確な権利情報が反映される機会を確保し、かつ、②登録が恣意的に拒否等されないようすべきものと考えられます。そこで、たとえば、コンテンツID管理事業者が、法定事業者から、一定の要件(たとえば、その要件は、内閣府令で定めるものとします。)を満たした対象コンテンツの登録の申請を受け、その内容を電磁的方法により一定期間公示し、原権利者から自らが原権利者であるにもかかわらず当該申請からその旨が欠如している等の異議が一定期間述べられなかった場合には、これを登録しなければならない等と規定することが考えられます。
▲16 | コンテンツID管理事業者となろうとする者から、一定の要件(たとえば、その要件は、内閣府令で定めるものとします。)を満たした届出があった場合には、所轄官庁(たとえば、内閣府、経済産業省、総務省、文化庁等)は、当該届出者をコンテンツID管理事業者として当該届出を受理するものとすることが考えられます。 |
▲17 | たとえば、国際技術標準である許諾コード方式等に基づいて、各コンテンツのIDの登録を行うことが考えられます。 |
▲18 | 登録される対象コンテンツ、当該対象コンテンツに係る法定事業者(もしあればコンテンツ・ライセンス事業者(下記4.(2)をご参照下さい。))、原権利者及びその利用の対価等が考えられます。 |
登録された対象コンテンツについては、対象コンテンツに係る実際の原権利者からの差止請求や人格権に基づく請求について、一定の場合に免責される旨の規定を定め、登録へのインセンティブを与えることが、デジタル・コンテンツの利用・流通の促進という観点からは望ましく、また、上記(1)のように登録に際して原権利者が異議を述べる機会を与える場合には、許容され得るのではないかと考えられます。
具体的には、登録された対象コンテンツについては、利用者、コンテンツ・ライセンス事業者及び法定事業者が権利侵害について善意・無重過失の場合には、原権利者は差止請求をなすことができず、また、人格権等に基づく異議申立19についてもかかる利用者等が一定期間内に対象コンテンツをサーバー等から削除した場合には免責されると規定し、かつ、登録された対象コンテンツについては、利用者等の善意・無重過失が推定されると規定することが考えられます20。 この場合、差止請求や人格権に基づく異議申立を行う原権利者は、利用者等に悪意・重過失が存在することを反証しなければならないことになります。
▲19 | かかる異議申立をなすことができる者には、現行法制と同様にワンチャンス主義の適用のある実演家が含まれ、原権利者は、自らの名誉・声望を害する利用に対しては、著作者人格権、実演家人格権や肖像権等の侵害を理由に異議を申し立てる権利を有するが、本文記載の制約に服する旨規定することが考えられます。 |
▲20 | これらの要件を善意・無重過失ではなく、善意・無過失とすることも考えられます。この場合、差止請求や人格権に基づく異議申立を行う原権利者は、利用者等に悪意又は軽過失を含む過失が存在することを主張立証しなければならないことになり、主張立証に関する原権利者の負担が低いといえます。 |
対象コンテンツの適正な利用と原権利者への適正な還元という本試案の目的に関しては、本試案は法定事業者に権利集中をするものであることから、その反面として、(1)法定事業者にどのような義務を負わせるか、また、(2)法定事業者以外に対象コンテンツの利用・流通を促進するための事業者を設けるか、が主に問題となるものと思われます。
まず、法定事業者は、自ら又は第三者をして、対象コンテンツを利用し又は利用せしめた場合には、当該対象コンテンツに係る原権利者に対し、対価の支払い義務を負うべきものと考えられます。この対価は、たとえば、当事者間の契約において定められている場合にはそれにより、また、所在不明の原権利者等に対しては、何らかの公正な対価を決めるメカニズムを策定することが必要と考えられます。
それに加えて、対象コンテンツの適切な利用を具体的にどのように実現するかについては、たとえば、次のような2通りの方策が考えられます。
対象コンテンツをより多くの者にあまねく利用させるという観点から、第三者からの合理的な条件21での利用の申込に対しては、法定事業者に当該対象コンテンツの利用を許諾しなければならない義務を負わせる22。もっとも、ある種類のコンテンツについてはビジネスを硬直化させる虞があること等を理由に、法定事業者にこのような義務を課さないことも考えられます。
法定事業者にA案のような応諾義務は課さず、対象コンテンツの利用については、法定事業者がその意思に基づき設定する条件やビジネスモデルに委ねる。なぜなら、本試案が想定している対象コンテンツの多数は、多くの関係者・原権利者が関与して産業的に製作されるコンテンツであり、その権利者となる法定事業者に関しては、経済合理性に基づく行動が期待できるため、法的な応諾義務を課さなくても、利用が促進されると考えられるからである。そのため、
仮に、法定事業者が自ら利用せず、かつ、第三者からの利用の申し込みに対してもこれを拒否する場合には、対象コンテンツの利用・流通の促進という本提案の趣旨から考えて、合理的な理由を必要とするものであり、対象コンテンツが死蔵されることを想定していない。
▲21 | たとえば、その条件は、内閣府令で定めるものとします。 |
▲22 | 法定事業者が著作権者等としての権利を保有している場合も同様とすることが考えられます。なお、法定事業者と直接に競合する第三者からの利用申し込みに対しても許諾を義務づけるか否かは、いずれの制度設計とすることも考えられます。 |
法定事業者の中でも、たとえば、自らコンテンツのライセンスを管理し対価を徴収・分配等する能力を有しているとしても、自らコンテンツのライセンスを行うよりも第三者に行わせる方がよいと考えるもの等も存在すると思われること、及び、法定事業者となる者の要件の設定次第では、このような基盤・能力を有しない者も存在するものと考えられます23。そこで、このような場合に対応するものとして、たとえば、現行の著作権等管理事業者に相当する事業者(ここでは仮に、以下、「コンテンツ・ライセンス事業者」と言います。)を設ける24ことが考えられます。
すなわち、コンテンツ・ライセンス事業者は、一定の財産的基礎を有し、収益の配分比率の策定、決済システムの整備等を行うことができる等と認められる者25で、法定事業者から利用に関する許諾を受けた対象コンテンツを、第三者に非独占的に利用させ、当該第三者より得た公正な対価を権利者に支払う者26と規定することが考えられます。その際、コンテンツ・ライセンス事業者は、第三者からの合理的な条件27での利用の申込に対しては、当該対象コンテンツの利用を許諾しなければならないと規定すべきものと思われます。
上記4.(1)に記載されたA案による場合には、さらに、たとえば、対象コンテンツが死蔵されるという事態を防ぎ、適正な利用を促進するという観点から、法定事業者に応諾義務を課すことに加え、法定事業者が一定期間内に登録を行わなかった対象コンテンツについては、コンテンツ・ライセンス事業者が法定事業者となることを認めるとすることも考えられます。
一方、上記4.(1)に記載されたB案によるならば、法定事業者には、経済合理性に基づく行動が期待できるため、対象コンテンツを登録して、自ら利用し、あるいは第三者に利用を許諾すると考えられるため、コンテンツ・ライセンス事業者が法定事業者となることを認める必要はないと考えられます。
▲23 | レコード製作者を例にとると、インディーズ(大手レーベルに属さない独立系)のレコード製作者等が考えられます。 |
▲24 | 競争原理をとりいれるべく、複数のコンテンツ・ライセンス事業者を対象コンテンツのジャンル毎に設けることが考えられます。 |
▲25 | たとえば、その要件は内閣府令で定めるものとします。 |
▲26 | コンテンツ・ライセンス事業者となろうとする者から、一定の要件(たとえば、その要件は、内閣府令で定めるものとします。)を満たした届出があった場合には、所轄官庁は、当該届出者をコンテンツ・ライセンス事業者として当該届出を受理するものとすることが考えられます。なお、各々の要件を満たせば、コンテンツ・ライセンス事業者がコンテンツID管理事業者等を兼ねることは認められるものと考えます。 |
▲27 | たとえば、その要件は内閣府令で定めるものとします。 |
デジタル・コンテンツの特性として、検索エンジンのためのキャッシュ行為やRAMへの一時的複製などのように、対象コンテンツを人間がコンテンツとして知覚できない形態で利用する場合が不可避的に生じます。しかし、インターネット等の技術の進歩は非常に早く、今後どのような技術が生まれるか分からないことから、少なくとも、このような事態に対して妥当な対応を機敏に可能とする制度として、利用目的や対象コンテンツの性格等に鑑み、その利用が公正であるといえる場合には、当該利用は、著作権及び著作者隣接権の侵害とならないものとする、いわゆるフェア・ユース規定を定めるべきものと考えます。
現在、著作権法の改正によるフェア・ユース規定の導入が議論されていますが、仮に導入された場合であっても、権利制限規定(著作権法30条以降)が従来かなり厳格に解釈されてきたことからすれば、(具体的な規範の定め方次第ではあるものの)ある利用がフェア・ユースに該当するか否かを裁判所が判断する際に、いたずらに厳格な解釈がなされる可能性があるのではないかと危惧されます。そのため、デジタル・コンテンツの特性に応じたフェア・ユース規定を、本試案に基づく特別法において、独立して設けるべきものと考えます。