原文:公正取引委員会:報道発表資料・平成21年1月23日 / PDF
公開日:平成21年1月23日
問い合わせ先:公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引調査室
電話 03-3581-3372(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp
以下、上記全文と若干の感想。
第1 調査目的・調査方法(1ページ) | |
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※どこからもなんの働きかけもなく、自発的に公取が動く事は考えにくい。 |
第2 調査報告書のポイント | |
1.アニメ産業の概要 | |
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2.取引上の問題点と課題 | |
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※一方的に発注者に注文を付けている。 6割が零細事業者である事、4割超から不満が出ている事から見て、妥当。 |
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※契約を書面で交わす事は少ないが、受注側はそれを望んでいる。 |
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■黄色:電波免許の管理人が、価値の創造者から著作権を奪い取っている。 ■緑色:ほぼ、「デジタル・コンテンツ利用促進協議会『会長・副会長試案』」に拮抗する文言。 同試案は、映像作品の「ネット権」をキー局に集中させる事を適当としている。 |
3.公正取引委員会は,今回の調査結果を踏まえ,関係業界に対して,独占禁止法・下請法の問題がないか点検することや,発注時における取引条件の十分な協議や書面交付を徹底することを求めるとともに,引き続きその取引実態を注視。また,独占禁止法又は下請法に違反する疑いのある具体的な事実に接した場合には調査を行い,法令に違反する事実が認められた場合には厳正に対処(57ページ)。 | ※キー局、および元請けに対する警告と言って良い内容。 「原著作者への敬意」は放送免許の管理人や、著作権ホルダーではなく「価値の創造者」に向く。 |
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※テレビ局は元請制作会社に対し,元請制作 会社は下請制作会社に対し,それぞれ取引 上優越した地位にあることが多い。 |
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発注元は「十分な条件交渉を行っている」と考えているが、受注側はそうではない。 発注者に一層の努力が求められる。 |
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※発注書面等の交付のない会社(全体平均で50.0%)は,発注取消し,内容変更,やり直し,代金減額等の不利益を与え得る行為を受けた経験がある割合が高い。 アニメ制作委託の特質上、すべてを事前に発注書面等に記載するのは難しいが、当初書面にできることは記載し,遅くとも納入日までには補充書面を含めた発注書面等を下請事業者に交付することが必要。 |
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※下請事業者に落ち度がないのに,発注取消し・発注内容の変更・やり直し・代金減額,費用補償無し、などの事例があった。 ※これは受託制作会社の同意の有無を問わず,下請け法違反となる。 ※こうした実情を放置したまま「ネット権」整備を進めるなら、益よりも害のほうが大きいかもしれない。 |
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著作権の帰属と収益配分 従来方式: ・2分の1がテレビ局単独,4分の1が共有。 ・元請制作会社の5割超は配分を受けられない。 製作委員会方式: ・出資しない限り元請制作会社に著作権無し。 ・出資の有無にかかわらず配分を得られる元請制作会社は約4割。元請制作会社の3割が不満。 |
なんの働きかけもなく、自発的に公取が動く事は考えにくい。ドコカからナニカの意図に沿った働きかけがあったと思われる。
参考:アニメータの賃金問題1 - ふつうの日記 - Fraternity7
内容的には、キー局および元請けに対し、厳しく監視しますよと威圧するに等しいものだが、これは2003~2005に掛けて、経済産業省が出した文書群と符合する。
同省は一連の公開文書の中で、放送局など「流通」が圧倒的地位にあると、価値の創造者に成果に見合った報酬が渡らない。と分析し、打開策として、1)独禁法の厳格運用、2)下請けプロダクションの経済的自立、そして3)キー局以外の伝播回路の育成。を挙げている。もちろん「日本のコンテンツ産業育成のために」だ。
参考:続々・あたらしいテレビのはなし - 2007/01/17 ageha was here
問題は2009/01/23という公開日だが、これはほぼ、「デジタル・コンテンツ利用促進協議会『会長・副会長試案』」に対するカウンターとして作用する。同試案は、映像作品の「ネット権」をキー局に集中させる事を適当としている。本文にまぎれて目立たないが。
自分も、建て増し温泉旅館化した著作権法体系には疑問を持っているし、中山翁の「民間契約に任せては百年河清を待つに等しい」には納得もしているのだけど、それで水源を涸らしては元も子もない。法は常に後追いであり、世の中を先導するものではない。
必要なのは「放送と製作の分離」と考える。製作とは著作権の集中管理だ。「製作・著作 NHK」みたいなアレ。ここで「製作と放送が資本分離」したらどうなるだろうか?
特定の伝播回路を持たない製作会社にとって「良い番組」とは「繰り返し、何度も見られるのが良い番組」だ。地上波、ネット、衛星、ケーブル、、、種々の回路で引く手あまたが良い番組(放映権)。BD、シネコン、iTS、、、、種々の販路で稼いで来るのが良い番組(サクヒン販売)。
個々の伝播回路に依存するものは動きが鈍い。伝播回路の分散は、自らの不利益になるからだ。広告無料放送にとって「良い番組」とは「シチョーリツが全てです!」。彼らはネット権を、シチョーリツの為に使うだろう。NHKにとって「良い番組」とは「受信料を払いたくなる番組」だ。彼らはネット権を、その為に使うだろう。「ネット権」をキー局に与える動きはいささか疑問だ。「地上波が圧倒的」な現状が崩れてゆく中で、ボトルネックになりかねん。
もちろん「製作と放送の分離」を進めたところで元請け・下請けの関係は変わらないが、そこは公取である程度カバーできるし、アニメ界全体としても是正に動き始めている。
参考:アニメータの賃金問題2 - JAniCAの設立について - ふつうの日記 - Fraternity7
うまく噛み合いさえすれば、河清に百年かかるとは限らない。